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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

安価な食欲と性欲の共同提供

その中の十中八九は怪しいと云ってよい。ほんの申訳に食器や空瓶を並べたのが、どうかした横町に行くとザラにある。そこには必ずその白い頬と唇の赤い女が居る。

何々紹介所、又は周旋所、口入所なぞ看板をかけたのもある。中に這入ると粗末な椅子やテーブルがあって、変な男が出て来て応対をする。何も知らずに世話を頼みに来た男女は、大抵一円か五十銭か取られて追払われる。それっ切りである。しかし、案内を知って来た男は奥や二階に通されるという仕かけである。こんな処のは、飲み喰い抜きの切り売りが多い。

安価な食欲と性欲の共同提供

東京市中がこんな浅ましい状態になった原因が、取りあえず二つある。一つは云う迄もなく一昨年の大地震である。

あの大地震は東京市中の到る処に安飲食店をゆすり出した。同時に東京市中にありとあらゆる女のクズをたたき出した。

喰い飢えた東京人、女に渇いた東の男は、滅多無性に安い食物と安い女を求めた。

職を失った人々は何という事なしに手軽な飲食店を開いた。中には一攫千金を極め込んだものも居る。同時に途方に暮れた弱い女たちは、何故という事なしにその唯一の財産を大道に晒して売らなければならなかった。