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きみつのみわく
機密の魅惑
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页
私は早速ホテルの女将にいろいろ訊いてみました。総領事夫人とは一面識もないような顔をして云ったのですが、
『この前の総領事さんの奥様が余りお優しい、いいお方でしたので――』
と言葉を濁してしまいました、探りを入れているのだと感づいたのかも知れません、そこで私は少し夫人の悪口を云って釣り出してみようかと思いました。
『宮城野さんは大分御評判がよくないじゃありませんか、威張ってるんですってね』
こういう女の社会で何より嫌われるのは威張ってるということなのです。私は故意と顔をしかめて、言葉に力をいれさもさも憎々しそうにいってやりました。すると女将はすぐ同意して、
『そうなんでございますよ。ほんとに威張ってらして――、御自分だけは御身分が違うんだなんて、容子をなさるものですから、皆さんに憎まれていらっしゃるんですの』
『総領事夫人を鼻にかけて、土地の古株の奥さまがたを立てないってわけなんでしょうね。お寄り合いだの会だので我儘をなさるんじゃありませんか?』
『否え、そういう処へはちっともお顔出しなさらないんでございますよ。いくら御招待してもお断りになるんでございますの、その癖、西洋人の会ならさっさと先立ちになってお出ましになりますそうですから、皆さんが気持ちを悪くなすって怒るのも無理はございませんの。