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きみつのみわく
機密の魅惑
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页
私は慰める積りで云ったんです。するとそれをどう聞いたのか、夫人は唇の色まで変えて険しい眼をして申しました。
『また何か私の事を云ってるんですか、きっとそんなこったろうと思ってました。じゃあ何んでしょう? 有喜子を私が殺したと云ってるのね、悪い事は何でも皆私におっかぶせてしまうんだから非道いわ』
『否え、別に誰もあなただとは云っちゃいませんよ』
『いいえ云ってるんですわ、きっとそうです、そうに違いないんです』
夫人はヒステリックな声で云いながら暗い顔をしているのです。私は何だか気の毒になって、
『一体あなたにはこういう土地は不向きだったのね』
と申しますと彼女は苦笑してうなずいて居りました。
『そうなんですのよ。でも有喜子がいなかったら、こんなことにもならなかったと思うんですの、有喜子は私を追い出して、総領事夫人になろうという野心があったんだそうですから、あの女の計画では私の評判を悪るくして土地に居たたまれないようにさせ、この家を乗っ取る積りだったんだそうですよ』
『でも、まさか総領事さんともあろう人が、素性も分らない女を令夫人にはなさるまいじゃありませんか』