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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
「うむ、それはそうだ。その時はちょっと眠りすぎたんだね。まだ一問も書かないうちに眠ってしまって、鐘が鳴るまで眼がさめなかったんだ。しかし落第したのはその時いっぺんきりだぜ。」
「でも、試験に居ねむりするの、いいことなんですか、先生。」
更に他の児童がたずねた。
「大してよくもないだろう。だから、お前たちに真似をせいとは言っとらん。真似せいたって、どうせお前たちには真似も出来んだろうがね。しかし、本田はゆうべあまり寝ていないそうだから、ひょっとすると、真似が出来るかも知れん。……まあ、とにかく、そのぐらいの気持でやるんだね。はっはっはっ。」
みんなは先生がほんの冗談にそんなことを言ってみたのだど思ったらしかった。しかし、先生の気持は、次郎と恭一とには、よくわかった。
やがて入場の鐘が鳴って、みんなはぞろぞろと校舎にはいった。二百人の募集に千人近くの応募者だったので、昇降口はかなり混雑していた。次郎は、きのうまでは何とも思わなかったその光景が、いやに気になり出した。
試験場にはいってからの次郎は、それでも案外落ちついていた。問題紙が配られると、彼はゆっくりそれに眼をとおした。