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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
すると、朝倉先生は、にっこり笑って次郎を見かえした。次郎は、それですっかり身構えをくずし、気がぬけたように腰をおろした。
「小刀はもう握っていなくてもいい。しまったらどうだ。」
先生にそう言われて、次郎は、自分がまだ小刀を握っていたことに、はじめて気がついたらしく、あわててそれを衣嚢に押しこんだ。
「君は一年だね。名は?」
朝倉先生は次郎の襟章を見ながらたずねた。
「本田次郎です。」
「本田か、ふむ。……だが、室崎と一騎打では、ちょっと骨だったろう。」
次郎は、三つボタンは室崎というんだなと思った。
「しかし立派だった。実は、君が室崎に言っていたことは、私もかげで聞いていたんだ。」
次郎は、あらためて先生の顔をみた。色の浅黒い、やや面長の、髯のない人だった。眼がすきとおるように澄んで、よく光っていた。年は権田原先生より少し若いくらいだった。
「だが、本田、――」
と、先生は言いかけたが、ちょっと思案して、
「まあ、しかし、室崎の方からきこう。どうだ、君の気持は?」
室崎は、ただうなだれていた。先生は、あわれむように彼を見ながら、
「正しい人間の強さというものが、今日こそしみじみわかったろう、いい教訓だ。