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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
二日もまえから合宿をはじめるのは、町の地理や、中学校の建物の様子などに、まえもって、いくらかでも慣れさしておくことが、みんなの試験度胸をつくるのに必要だと思われたからである。しかし、みんなとしては、そんなことよりも、一日も早く賑やかな町に行き、そこでいっしょに寝泊り出来るということが、ただわけもなく楽しかった。――一般にこの辺の児童は、入学試験に対しては割合にのんきで、競争意識で神経をいら立たせる、といったようなことはあまりなかったのである。
附添いの先生は、次郎や竜一たちを四年から受持ってくれていた権田原先生だった。
この先生は、児童たちが何かいたずらでもやっているのを見つけると、その大きな眼をむいて拳固をふりかざしておきながら、すぐその手でやさしく児童たちの頭をなで、「これから気をつけるんだぞ。」と言って、それっきり、けろりとなるといったふうな飄然としたなかに、いかにも温情のあふれている先生で、年歳はもう四十を越していたが、師範を出ていないせいか、学校での席次は、まだ四席かそこいらのところだった。毛むくじゃらな、まんまるい顔を、羊羹色の制服の上にとぼけたようにのっけて、天井を見ながらのっそりと教壇に上って来るくせがあったが、その様子が、不思議に児童たちの気持を真面目にもし、またなごやかにもするのだっ