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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「うん。亭主は税務事務所に勤めている」

タクシーは今京葉国道を走っていた。右手に海が陽にかがやいて見えた。

「つまり伯父さんは、今独りなんだろう。だから君にコネをつけたいんじゃないのか?」

「何で?」

「金を送らせないで、自分で取りに来ることや、また金をせびりに来ることさ」

私は言った。

「困らせたり、いやがらせをしたりして、それでコネをつけとこうと言うような――」

「コネか?」

栄介はわらった。

「そりゃずいぶん高等戦術だな」

しかし栄介の胸の底には、かぐろい憂欝の翳が、かすかに揺れていた。あの下関の飲み屋で城介が、おやじのタネだとはっきり言い切れない、と言ったのは、自分の子供にかこつけて冗談を言ったのか、あるいは本気で言ったのか、城介が戻って来ない以上、もう判るすべもない。今は生き残った栄介と幸太郎のみに持ち越されている。

沈黙が来た。海沿い道のところどころに、貝類を売る店があった。

(あるいはあの女が、それであったかも知れないな)

窓外の景色を眺めながら、栄介はまたそんなことを考えていた。しかしそれはあり得ないことであった。

(またウソを考えている)

城介が自分に子供がいると言ったのは、あれは冗談でない。