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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「上京当時、金を持ってたらしいって、どうして判ったのかね?」

「いきなり上京はせずに、途中で京都や奈良や名古屋などで、泊って来たんだ。まあ昔の友人を訪ねたのか、物見遊山のつもりで下車したのか、それは知らないけれどね。とにかく金銭的には余裕があった筈だよ」

「定額の他に金をせびるというのは、その金が底を尽きかけた――」

「それは判らない」

幸太郎が金をせびりに来るようになったのは、半年ぐらい前からだ。せびると言っても、幸太郎は下から出るのではない。堂々と借りて行くのである。

「金を貸して呉れ」

とは言わない。

「金をいくらいくら貸せ」

栄介の都合のいい時は、その額を差出すが、都合のよくない時は断る。断っても、幸太郎は文句は言わないし、貸せない理由も聞かない。黙って戻って行く。また一週間もすると、同じ金額を借りに来る。結局借りられてしまうのだ。

「どうもおれは弱気なもんでね」

栄介は苦笑いをした。

「とうとう出してしまうんだ」

「東京で伯父さんの身寄りというのは、君だけなんだろう?」

「おれの弟も妹も東京にいる。しかしその代表として、おれだけだろうな」

「妹さんは結婚しているのかい?」