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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「まあそう言うことです。しかしこちらは大沽だと言っても、ぴんと来ない。ここで入隊するのかと思ったら、また汽車に乗せられたよ。今考えるとあの大沽というところは、兵隊の集散地だったらしい。あのバラック建てが、中継所の役をしていたんだね」

彼等は汽車に乗せられた。貨車じゃなく客車だったが、船艙以上の詰め込み方であった。内地の軍隊ではなく、防寒服装なので、しかも新品だから体に馴染んでなく、ぶくぶくに着ぶくれている。まだ武器は持たされていなかったが、背負袋や水筒その他を支給されている。客車の定員を守っても、それらの分だけがはみ出るのである。

汽車は二日二晩奔り続けた。行先は大同である。

汽車にはスチームが通っていた。大同から迎えに来た下士官や古兵は、いたずら半分に、

「前方に八路軍がいるという情報が入った」

とか、

「列車転覆の計画があるらしい」

などとおどす。窓にはシェードがおろしてあるので、外の景色は見えない。車内の電燈も薄暗く、むんむんしている。矢木城介は偶然加納と座席で隣り合わせていた。名を名乗り合った。城介は言った。

「ひどいもんだね。まるで屠殺場行きだ」