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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
一軒だけ大きな棟があって、それにこの一廓の本家が住んでいたらしい。日本軍はそこを中央集会所兼食堂に使用していた。加納ら初年兵は他の小さな棟に、お前たち三人はここ、お前たち五人はここと、戦時中の配給品のように、あちこちに配られた。
各棟はそれぞれオンドルつきで、ほかほかとあたたかかった。初年兵らはやっと生色を取り戻した。
「なにしろ長丁場を、素通しのトラックで飛ばして来たんだからねえ。くたくたにくたびれているし、身体は冷え切っているし、そしてその夕食にはお赤飯に鯛の尾頭つきが出ましたよ。その他甘味品、カス巻きってんですがね、カステラに餡を入れてロールしたやつ、それに氷砂糖など。それでびっくりして、軍隊というとこはこんな山の中でも、こんなに御馳走して呉れるのかと、がつがつ食べたね。矢木、いや、城介君も」
「食糧は豊富だったんだね」
「ええ。豊富だった。車エビがどさりと輸送されて、初年兵でも一人当り三匹ずつフライにして食べたこともある。今車エビなんて、やたらに高くて、自分らの口にはとても入らないがね」
疲れただろう、もう今晩は寝かせてやれ、という隊長の言葉で、初年兵たちはそれぞれの棟に戻って寝た。