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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

そしておれが変な応対をすると、手を打って笑いころげるのだ。東京の人間って、薄情な奴が多いよ。しかしもう慣れた』

環境が変ると、すばやく適応出来ない。まごまごする。そんな性質がおれにあるが、城介にもたしかにあると、その一節を読んだ時栄介は考えた。

(つまりおれたちは、不器用な性質を分け合ったんだ)

「矢木さん。かかってますぜ」

加納は栄介に注意をした。栄介はあわてて糸をたぐり上げた。ハゼがくっついて上って来たが、すでに釣針を腹中深くのみ込んでいた。

「部隊には兵舎はないんです」

加納は栄介のハゼを受取り、へらを器用に使って針をはき出させながら答えた。

「民家を接収して、そこに寝起きする。テレビの軍隊ものなどで、よく内務班の光景が出て来るね。わたしたちの内務班は、あんなものじゃなかった。だからテレビを見ても、ぴんと来ないね」

「民家というと、やはり独立家屋の――」

「独立? いや、独立でもない。大家族主義、同族主義というのかな。とにかく一廓が三千坪くらいあってね」

周囲にぐるりと土塀をめぐらしている。その中に家が幾十棟も立っている。ごちゃごちゃと不規則に立っている。