轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
つまり隧道である。出入口には機関銃でそなえる。周囲の山々は八路軍がひそんでいる。最前線と言ってもよろしいが、大した戦闘というものはない。
「自分がそこにいたのは三箇月ぐらいなもんですが、敵兵の姿はほとんど見なかったね」
加納の頬はウィスキーでかすかに染っていた。
「夕暮になると、彼方の山からカタカタカタッと十発ばかり打って来る。チェッコ機関銃です。こちらもその方向にドドドッと十発お返しをする。これが、おやすみなさい、という挨拶ですな。しゃれたもんだね。一日の戦闘というのは、それっきりだ」
「何故敵は襲撃して来ないのかね?」
栄介はいぶかしく訊ねた。
「そんな少人数なら、かんたんだろう」
「そうだがね、八路軍の本当の敵は、国府軍なんですよ。日本兵なんかを相手にしては損だ。人員だの武器は温存して置きたいんだね。だから討伐に行くと戦闘になるが、向うから積極的には攻めて来なかったね」
「すると分遣隊も呑気なもんだな」
「そうですよ。飯を食う他には、何も仕事がない。花札をひいたり、将棋を指したり、昼寝をしたり、酒など飲んでごろごろしているわけだ。ええ。将棋は手製です。将棋の駒をつくったやつに聞いてみると、あちらの黄楊は日本の黄楊にくらべて、年輪がつまっていて、三倍ぐらい堅いそうです。