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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「それを川辺軍曹は思い出したんですな」

加納は言った。

「その頭蓋骨を掘り出して来た。そんなの効く筈がないと言っても、衛生兵如きの言を聞く男じゃないんです」

掘り出して来ただけなので、頭蓋骨はまだ堅い。川辺はそれをだるまストーブに入れ、七日七晩かかってかんかんに焼き上げた。骨というのは頑丈なもので、ストーブぐらいの熱では破片にはなるが、粉にはならない。

「川辺はその破片を飯盒の蓋に入れ、金槌でしきりに叩いてたね。いくら叩いても、粒状になる。粉には絶対になりませんでしたよ。骨が新しかったせいかな」

川辺は粉にするのをあきらめて、その粒状の人骨を服用した。その夜彼は突然発熱し、水銀柱は四十度に上った。

「無茶なことをするもんだねえ」

栄介は言った。骨の話だけに、ぎくりとこたえるものがあった。

「それでその男、どうした?」

「どうしましたかねえ」

加納は遠くを眺める眼付きになった。

「翌朝、交替の衛生兵が到着して、自分は大同に行くことになったんです。何のために大同に集まるのか、わたしはまだ知らなかったけれど、同年兵たちに久しぶりに会えるのが嬉しくてね。もしかすると召集解除になって、日本に帰れるかとも思って――」