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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
宿舎は小学校で、そこへ到着した時に、婦人会の面々がやって来たのだ。各教室を廻り、甘味品を支給する。婦人会長らしい五十女が、恩着せがましいような、いやがらせのような言い方をしたので、加納たちは少しむっとした。彼女らも軍隊ずれをしていて、将校は大切にするが、下士官兵に対しては、子供扱いにする気配があったのだ。城介が立ち上って、次のような意味の発言をした。
「自分たちはこんなヨウカンの如きものは食べ飽きている。バナナとかパイナップルとか、そんな果物を持って来てもらいたい」
向うもぐっと来たらしい。バナナなどというのは、当地では俥夫馬丁が食うもので、皇軍ともあろうものががつがつと食べるものでない。少時いささか険のあるやりとりがあって、座がしんと白けた。
「城介君は頭にかちんと来たんだね。眼がきらきらと光って――」
加納の言葉を聞きながら、私は東京の遊園地での城介のあの眼を思い出していた。何か思いつめたような、凶暴にさえ見えるあの眼の動きを。
「おい。皆」
城介は振り返って呼びかけた。
「ヨウカンなんかに手をつけるんじゃないぞ。おれがバナナ屋を呼んで来る」
城介は教室の窓から飛び出し、街からバナナ売りを連れて戻って来た。