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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「部隊の中で、全然打ってない奴。その徴候も動機もない奴。これをマイナスの人間としましょう。そんなのを名簿から順々に消して行くと、プラスらしいのが何人か残る。そのプラスの中で、もっともその条件を具えた、疑いの濃厚なのが、城介君なんだね。矢木軍曹に絞り上げられるんだ。上層部ではすでに城介君に目星をつけていたらしい」

汽車は大同に到着。加納と城介たちはまた厚和の野戦病院に戻る。帰還要員の指名を受ける。

ある日衛生兵がオンドルの焚き口の中に、かなりの数量の空アンプルが捨てられているのを発見した。調べて見ると、全部パビナールである。早速部隊長に届け出た。

加納は医務室でそのことを知った。城介を捜し求めた。城介は宿舎に引っくり返って、慰問品の小説本を読んでいた。帰還要員なので、サボっていても、とがめる人はいないのである。

「矢木。パビナールを打っていたのは、やはりお前だったんだな」

加納はやや語気を荒くして言った。

「空アンプルが見付けられたぞ」

「そうか。オンドルの中のか」

城介は本を投げ捨て、ゆっくりと起き直った。すでに覚悟をきめた、捨て身の気配が感じられた。