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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「穿刺してみよう」

と、医長が言った。コブに針が刺された。見えないけれど、かなり太い針であることが、その痛みで想像出来た。

(ああ。おれのコブは侮辱された)

全身を固く緊張させたまま、不安をまぎらわすために、栄介はいわれのないことを考えていた。

(現在も侮辱されつつある!)

「何も出て来ないな」

針を引き抜きながら、医長は言った。

「これはたんなる脂肪腫だ。もうよろしい」

彼は診察から解放され、衣服をつけながら訊ねた。

「骨が突出しているのは――」

「やはりその時、折れたんですね」

「ここが張って来て、苦しいのですが――」

「うん。それは――」

肱掛椅子に戻り、医長は彼のかかりつけの医師への返事を、考え考えしながら書き始めた。

「骨が動くって、どういう意味だね?」

私はいぶかしく訊ねた。

「手や足を動かすと、手や足の骨はそれについて動く。そのことか」

「そんなかんたんなことじゃないよ」

栄介は苦笑した。

「脊椎の一部が変形する。するととたんに平衡が失われる。自立するのに具合が悪くなるんだね。しかし変形は既定の事実だ。他の骨がその変形に応じて、それぞれ形を動かし始めるんだ。