轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
四郎は栄介よりも酒が強い。先ほどからかなり飲んだのに、まだ声音にいささかの乱れも見せていなかった。
「そりゃいけませんよ。返事は出さなくちゃいけない」
安子の亭主の川津が、彼に顔を向けて言った。この方はいくらか呂律が怪しかった。
「なぜ?」
「なぜってこたあないでしょ。手紙に返事は出すもんです」
川津は勢いをつけるために、盃を一息であけた。川津は税務事務所に勤めていて、毛蟹のように毛深かった。齢は栄介より三つ下である。
「あんたが七十何歳になって、昔可愛がってた子供に手紙を出すとする。それに返事が来なきゃ淋しい、いや、淋しいどころか、悲しいじゃないですか」
「そうか。しかし君は七十でもないのに、七十爺の気持がどうして判るんだ?」
「あいつはうちのザクロを持って行ったんだよ。植木屋を連れて来てね」
四郎が口をはさんだ。
「むりやりに持って行って、自分とこの庭に植えてしまったんだ」
「そうだったかな。そう言えば納屋の傍にザクロの木があったな」
「兄さんが出征したあとだよ」
四郎の話によると、戦時中だからザクロなんか必要じゃない、前庭も菜園にして野菜の自給自足をはかるべきだと幸太郎が主張して、引っこ抜いて持って行ったんだという。