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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

満腹している時にザルソバを出されたようなもので、要するに手を動かすのが面倒くさかったのだ。

一月三日の日に、弟の四郎と妹夫妻が年始に来た。酒を酌み交わしている中に、栄介は幸太郎のことを口に出した。出そうか出すまいかとの迷いもあったが、おれだけで背負うのはイヤだという気持もあった。

「この間、幸伯父から手紙が来たよ」

「へえ」

四郎は膝を乗り出した。

「どんなことが書いてあった?」

栄介は立ち上って書斎に行き、机の引出しをあけた。ごそごそとかき廻した。

「おや。確かにここに入れといた筈なんだがな」

状差しその他を調べたが、見当らなかった。そこで賀状だけ持って、彼は宴席に戻って来た。

「手紙は見当らない」

賀状だけ回覧して、手紙の内容は口で説明した。四郎は刺身をつつきながら、興味ありげに耳をかたむけていた。妹の安子が言った。

「それで返事は出したの?」

「いや。出さない」

「年賀状も?」

栄介はうなずいた。

「いつ頃上京して来るのかしら?」

「爺さんだから、寒い間はムリだろう。まあ四月か五月だろうな。しかしおれは会わないよ」

四郎がいやにはっきりした口調で言った。彼は画が好きで、戦後その方面の塾に入って、今はそれで生活を立てている。