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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

一応門構えの家に住んでいても、内実は火の車までは行かないが、相当苦しかったものらしい。裏庭はすっかり耕されて畠となり、菜園となっている。野菜に関しては、ほとんど自給自足の体制となっていた。栄介たちも草むしりや害虫取りが日課になっていた。で、自宅で餅をつくのも、贅沢や景気づけのためでなく、自給自足の精神にもとづいていたようである。

その点本家の幸太郎のは、少々趣きを異にしていた。栄介の家と違って、臼をいくつも用意して、町内の若者を雇う。餅も自家で消費する分の三倍も四倍もついて、社会鍋や小学校に寄付したり、善哉をつくって大盤振舞いをしたりする。つまりこれは行事と言うよりも、お祭りみたいなものであった。おそなえ餅だって、栄介の家のものにくらべると、四倍ぐらいの容積があった。栄介たちも招ばれて行くのだが、彼は別段本家の餅つきをうらやましいとは思わなかった。ただわいわいと猥雑に人が動くだけで、栄介たちは付録のように片隅に坐らされ、ひっそりと眺めているだけで、手伝いすらさせてもらえない。そこへ行くと自分の家の餅つきは、主役とまでは行かないが準主役で、餅を丸めるという重要な仕事を与えられている。