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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

城介の方を兄貴だと思ったらしいんだね」

「その天ぷらうどんを、君はタダで食べたのかね。イヤだと言って、金を払おうとはしなかったのか」

私は訊ねた。

「僕なら、いや、若い時の僕なら、そうするよ」

「いや、甘んじて御馳走になったよ」

栄介は口を歪めて笑った。

「意地悪爺さんに似合わない、壮士芝居のようなことを言うなよ。おれは腹がすいたから行っただけで、仇討ちに行ったわけじゃない。しかし、その天ぷらうどんはうまかった。天ぷらうどんと言うと、君はエビか何かの天ぷらを考えるだろうね」

「うん。衣ばかりが大きくて、中身は小さいやつをね」

「おれの地方じゃ、天ぷらうどんと言うと、そんなものじゃない。うどんの上にサツマ揚げが乗っかってんだ」

「サツマ揚げ?」

私は失笑した。

「なるほどね。サツマ揚げも天ぷらの一種には違いないが、少々貧乏たらしい感じがするな」

「いや。それが貧乏たらしくないんだ」

栄介は断乎として言った。

「おれんちの方は、魚が新鮮で安い。サツマ揚げにしたって、へんなまぜものが入ってない。つまり東京のサツマ揚げみたいに、粗悪なものじゃないんだ」

「それはそうだとしても――」