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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

もちろん標識柱に対しては、それを毀損したんだから、彼は加害者だけれど」

彼は急に興味をもよおした風に、眼をきらきらとさせた。そこで私は、私が見た一部始終を、話してやった。彼は適当にうなずいたり、相槌を打ったりして、聞いていた。

「それでだね」

最後に私は言った。

「背骨の傷なんて、案外直りが早いんじゃないかと、僕は思うんだ」

矢木はしばらく黙って、何かを考えていた。やがて口を開いた。

「それを言いたいために、そんな長話をしたのか」

「それもあるがだ――」

私は答えた。

「災難はどこにひそんでいるか判らない。それも言いたかったんだ」

「ふん。君も近頃説教づいて来たようだな。齢のせいか。たしか君も四十四歳だったね」

矢木はわらった。

「で、その女、君の知合いだったのかね」

「いや。全然知らない。ただの行きずりの人間だよ」

「じゃ病院に着いてすぐ気を取り戻したことや、負傷の箇所を、どうして知ってるんだい?」

「病院に電話をかけたのさ、その翌々日。病院の名は、救急車の男が言ったのを、メモして置いた」

「何故そんなことをするんだね」

「僕は見たことの続きやつながりを知りたかったんだ。