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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「頭を刈ったら、やけに寒さがしみ渡るよ」

そしてお酒と関東煮を注文した。

「おやじやおふくろの前じゃ、窮屈で酒もうまくねえよ。やはりこんなとこでないとねえ」

城介が頭髪を刈ったのは、昨日の昼である。彼の家の前庭で、栄介が手ずからバリカンを使った。矢木家は裕福でないので、床屋には通えない。子供の時から、お互いに刈り合うのである。床屋だと金がかかるが、お互いだとタダだ。

中学校を卒業して以来、彼はバリカンを持ったことが一度もない。城介はしきりに痛がった。

「痛え。痛え」

城介はさかんに痛がって、大げさな悲鳴を上げた。実際彼の腕は鈍っていたが、大げさな悲鳴は幼ない弟や妹へのサービスのためでもある。悲鳴を上げる度に、弟や妹は喜んで、笑いさざめいた。弟妹は城介を見るのが初めてで、

「東京の兄さん」

「東京の兄さん」

と、城介が帰った日から、まつわりついてばかりいた。

「ああ、痛かった」

刈り終ると、城介は妹に鏡を持って来させた。

「兄貴。ひでえ刈り方をしたな。まるで段々畠じゃないか」

「すぐ伸びるよ。伸びたら、段々も消えてしまう」

丁度その時、幸太郎の店の者が使者として来た。