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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
キレ者安治川の“栄吉”
私のやり方もひとつは手数料節約の意味もあったわけだ。
次に行ったのは室谷佐兵衛、室佐という四ッ橋の材木屋で、ここはしばらく続いた。私は松吉と名づけられたが、お家さん(奥さん)から、『松吉や、なでさん呼んどいで、それからついでにかきをこなから買うといで……』といわれて、当時大阪では「なでさん」がマッサージ師で「こなから」が二合五勺のことであるのを初めて知った。結局ここもおさらばして問屋橋にある板問屋の俵松に住み変えた。板問屋の労働は激しかった。日のあるうちは浜から倉庫へ板をかついで運ぶのだ。
筋肉労働にはあきがくる。私は筋肉労働ではない仕事をしてみたいものと商売を物色していたが、ある日、新聞の経済欄に載っている物価表に目を通すうち
『これだ!』
とひざをたたいたのは石炭屋である。そのとき私は十七歳になっていた。
キレ者安治川の“栄吉”
石炭屋を商売に選んだ理由はいろいろある。まず第一に石炭は事業界における米のようなもので、必要欠くべからざる存在である。次に石炭を扱うのは石炭仲仕というものがいて、店員は自分の手をよごさなくていい。いわばブローカー業である。