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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
ピストル持って金捜し
ともかく私は喜び勇んで大連を後に旅順へ向かったのだった。
ピストル持って金捜し
旅順へ着いてから間もなく、例の豆本“美文之資料”のとんでもない効能がさっそく現われた。私は谷口組の下請けをやっている菊本氏の家に厄介になりながら、無給で苦力の監督などを手伝わされていたが、ある日、谷口組の親分が『看板の下書きをしろ』というのである。どうやら私の書いた寄せ木細工の大美文のことが親分の耳にはいったらしい。つまりあれほど文章がうまいなら、学があるに違いない、したがって字も上手だろうとの至極明快な三段論法なのだ。親分は中肉中背、眼光は鋭く馬賊の頭目みたいな男。赤裏の黒いマントなど羽織って、えらく威勢がいい。その直接のお声がかりというので、私は恐る恐る前へ進み出た。
みると看板の場所はロシア風の倉庫を改造した高さ百尺もある事務所の壁だ。私はしり込みしたが、親分は『書かないのなら出ていけ!』である。半泣きだった。『南無三宝』私はどうにでもなれと腹をきめ目もくらむ木組みに登って、命がけで書き上げたが、当然の結果として、ひどくゆがんで変てこな字になってしまった。
『ヘタくそじゃな!』