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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

「苦しかった過去」を持つ楽しみ

ゆりかごから棺おけまで。もっとも段ボールのゆりかごはまだ作ったことはないが、棺おけなら戦時中にやったこともあり、戦後も一昨年(三十三年)、ある坊さんの生き葬式用に作ってみたことがある。死人に口なしで、燃え心地などあまり確かめたことはないが、きっとぐあいのいいものに違いない。その節(?)にはご愛用のほどを願っておこう。

「苦しかった過去」を持つ楽しみ

夢のようにすぎた八十年であった。私はいま七十九歳。戸籍面は明治十五年生まれだから七十八歳、現代風に満で数えると七十七歳。ややこしいことである。

人に比べれば、波乱の多い青春時をすごしたが、いまから思えば、私は波乱の中での経験をはだで受取り、自分の生きるための糧とすることができたのは幸いだった。ただ残念なのは、二人の息子がすでに他界したことである。二男賛次郎は大戦中陸軍大尉の資格で糧秣廠に通っていたが、疲労のため昭和十九年四月八日病没。長男庸太郎も三十三年三月十四日に病いで失った。二人の息子の生母とも別れ、大正末から世帯を持っていたいまの妻と二人きりの生活である。もっとも孫が六人おり、この成長が楽しみだ。