轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
職業遍歴――三日と続かず
のちに私は苦心して建てた工場を関東大震災や戦災で失ったが、この七円のがま口ほどなくして惜しいと思ったことはない。しょんぼりと歩きながら考えたが、いまさら聘珍楼に帰れた義理でもない。ふと思いついたのは、いつもいっていた銭湯のことである。そこのおかみさんが、いつもやさしい言葉をかけてくれたが、もうそこしか頼るところはない。こんどは徒歩である。へとへとになって横浜の銭湯についたのは、夜の十時をとっくにすぎていた。
職業遍歴――三日と続かず
私がおかみさんに泣きついて雇ってもらった銭湯は「石川湯」というのであったが、この家の仕事はかなりつらかった。夜は客の衣類入れの世話をし、昼は昼でほうぼうの建築場からたきつけを集め、荷車に積んで引いてくるのである。あまり体がつらいのでいつも湯にはいりにくる顔見知りのいきなねえさんに頼むと『じゃ、うちへおいでよ』との返事だった。多少の好奇心も手伝い、教えられた居留地の家へ出向いた。入口には「ラーレス・ハウス」という看板が出ている黒人相手のいかがわしい酒場である。ねえさんは店主の愛人さんだったのだ。すすめられるままに泊まろうとすると、驚いたことに主人の黒人は男色家らしく、変なことを言い寄ってくるので『これではたまらん』