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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

段ボール完成!

当時は俗に「なまこ紙」といっていたが、私たちはこの国産品を作ろうと思い立ったわけであった。

段ボール完成!

東京の片隅、はまぐり料理屋とおもしろいお茶屋にはさまれた狭い品川本通りを一歩はずれると、目黒川のほとりに本照寺という小さい古寺がある。池田良栄の仲介で荒川、石郷岡、一志の三人の出資者を得た私は、その本照寺の裏にある二十坪ばかりの平屋を月五円で借りた。この家のいちばん奥の六畳の部屋に私が考えた通称「なまこ紙」を作るトラの子の機械を据えたのだが、これが私たちが名づけた三盛舎の工場というわけである。私は二十九歳、この履歴書の最初で書いたように、稲荷おろしの「紙の仕事は立板に水じゃ」のことばもあって、とにかく懸命にボール紙にしわを寄せる仕事に取組んだのだった。

使用人としては、原紙などの運び役に櫛原万造という大酒飲みのじいさんと、私が日給二十銭で雇った亭主持ちの女子作業員、おげんさんの二人。家の中には、くだんの機械のほか、機械のロールをあたためるための七輪二つ、それにかまと、そば屋から来てそのまま「とりこ」になったどんぶり一つというしごく簡単な生活である。