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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
めずらしい仰せ出しと、久子だけでなく、爺の左近も、家臣たちも、それには意外な思いをしたらしい。もっとよろこんだのは、せっかくやって来た散所の代表者たちである。それと、正行やその下の幼い子どもたちだった。
どんなことになるのかと、みなあくる日を楽しんだ。正成は桐山の小六をよんで、介にもそれを見せ、それから住吉へ送って行けと、いいつけた。
次の日。
野芝居の場所には、館の庭のほどよい所が見たてられた。
散所民の芸人たちは、竿を立て、袖幕を張り、笛太鼓座などのしたくがすむと、
「こちらは、いつでも」
と、見物が揃うまで、長屋で酒飯のご馳走にあずかっていた。
まもなく、楠木家の門は、もう朝からむらがっていた老幼男女のために開放されていた。
「日ごろめったに家を出ぬ者は誰なと見に来い」
との触れだったので、多くは家士たちの家族だろうか。中には歩けぬ老人が背負われて来るのさえあった。また山里の百姓たちは「おやかたの内を拝見するだけでも」と、おずおずと連れだって、大庭のまわりを埋め、まばゆげな顔を野天にそろえて坐り合った。
正成も縁へ出ていた。
正行や三郎丸などの幼少をそばへおいて、いかにも祝福された父親の姿だった。