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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

顔だちも躯つきもきりっとしていた。背丈は五尺そこそこで、まず小さいほうであるが、胸や腰のあたりにまだ固そうでいながら、十八という年の柔軟さと、匂やかないろけがあふれていた。色の白いきめのこまかな肌で、おもながの顔に眼が大きく、眉毛がやや尻下りであった。左の唇の下に黒子があって、客に向ってそれを教えながら、――これ食いたしんぼの黒子よ、あたしをお嫁にする人はあたしに食わせることで追われるんですって、気の毒みたいだわ、と云うのが口癖であった。

店の土間には五人ずつ並べる飯台が四つ、坐って飲むための四帖半の小座敷が一つあった。二方の壁には品書などはなく、片方に桜井秋山の山水、片方に師宣の肉筆の風俗画が懸けてある。秋山はそのころ流行の画家であり、師宣の肉筆は浴後の美人で、むろんどちらもさして高価な品ではないが、そんな店には似合わない飾付であった。

二人の小女、おそめとおよのはおない年の十五であった。おそめのほうが縹緻がよかった。およのは本当の名はちよのというのであるが、それを嫌って、自分から『よの』と呼ぶことにきめた、つまりそのほうが上品に聞えるというわけで、当人自身も(客たちはだぼ鯊と云っていたが)つねにできるだけ上品にふるまおうと努めていた。