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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
従って、右翼が、どんな革命を起こそうが、左翼が、それに対してどういう手を打とうが、もっと手近なところでは、吉田内閣がつぶれようが、新党ができようが、社会党が内閣をつくろうが、そんなことで片のつく問題ではない。政治的の「内乱」は、生産にプラスを加えるものではなく、むしろマイナスになる場合が多い。だから、騒げば騒ぐほど、国民の生活は苦しくなる。
また、一つ覚えを唱えるが、今のところ考え得る解決法は、国内にある資源と、この国に降り注ぐ太陽光線の勢力とから、民族が生きて行けるだけのものを生産することである。そしてそれには、できるかどうかわからないが、唯一の望みは、科学の力を借りることである。しかもその可能性は考え得るのである。可能性では不充分だと言われるかもしれないが、そのままでは死ぬに決まっている癌の患者の場合、手術によって治る可能性があったら、やってみるべきであろう。
それほどわかり切ったことを、なぜ国家なり国民なりが採り上げないかが、一番不思議である。もっとも考えてみれば、これは不思議ではなく、当然のことかもしれない。あまりにも明白で、しかも一番大切なことは、たいてい忘れているのが、人間の本性らしいからである。