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かがくはやくにたつか

科学は役に立つか

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页

青空文庫

五 国民の期待と科学

に拘泥してはおられない。しかし本当は、この「瑣細」な点が一番大切なのである。

こういう研究は、毛と限らず、繊維の強度試験の場合にも必要で、紡績日本としては、意味のある研究なのである。そして今日では、そういう難点を解決した繊維強度試験器も出来ているので、このような例が、そのままの形で現われる心配はまずない。しかしこれと類似の例は、いろいろな方面で沢山ある。研究が職業化してくるにつれて、この傾向は、どこの国でもだんだん強くなっているようである。

アメリカならば、年に何万という研究報告が出るであろうし、日本でも何千という数であろう。しかしそういう厖大な数の論文のうちで、十年と寿命のあるものは、数パーセントに過ぎないように思われる。一番の原因は、商売としての研究、すなわち報告をつくるための研究が多いからである。

五 国民の期待と科学

役に立たない科学には、これ以上立ち入らない。またその必要もない。ただそういうものが、相当数あることを知っておれば、それで充分である。

次ぎに問題になるのは、正統的な科学で、それ自身としては立派なものであり、むしろ科学の本道ともいうべきものについてである。