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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
七 日本の現状と科学
それは精神的な面であって、仁科さんが新しい量子力学を携えてヨーロッパから帰朝され、日本でも、この方面の研究が華々しく萠え出た時期であった。現在ジョンス・ホプキンス大学の物理主任教授をしているディーケ博士や、ミシガン大学のラポルテ博士などが、若い研究員として理化学研究所へやってきていた時代のことで、日本の国力は、最盛期にあったわけである。
国力と理論物理学とは関係が無いじゃないかと、言われる方があるかもしれないが、私には深いところで、かなり大切なつながりがあるように思われる。本来の姿の科学が、正しく発達するためには、雀の涙ほどの研究費の多寡は、大した問題でなく、それよりも国の力、それは精神力の充実を含めての話であるが、その方がもっと大切なのではなかろうか。こういう意味で、私の言う役に立つ科学、すなわち国力を高める科学は、純粋科学の発達を犠牲にするものではなく、両立するものなのである。
七 日本の現状と科学
このあたりで少しいやがられることを書かざるを得ないが、現在の日本における科学の研究をみると、その中には破産した家の娘が、琴と生花とを習っているように感ぜられるものが、相当ある。