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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
一二 「学問尊重」の気風
誰だって、芯からの馬鹿でない限り、生きるのに必要な最小限度のものが生産されない限り、家畜となって生かしてもらうか、死ぬか、どちらかしかない、ということぐらいは、わかるはずである。これは小学校の生徒にもわかる真理である。
ところで、この難局を打開する道として、もっとも一つの可能性としてではあるが、科学の力を使ってみるという術が一つ残されている。溺れるものは、藁をもつかむというのは、古今を通じての真理である。現在の日本の為政者たちは、おそらく藁でもつかみたい気持になっているに違いない。それにもかかわらず、科学を一つ使ってみようという話を、具体的な問題としては、聞いたことがない。すなわち日本の科学は、藁程度にも考えられていないという結論にならざるを得ないのである。
こういう科学軽視或いは無視の風潮については、真面目にそのよってきたるところを、考えてみる必要がある。
一二 「学問尊重」の気風
私はこの問題を、簡単に、為政者の知性が低いとか、国民に科学性が足りないとか、という言葉で片付けたくはない。本当は、遺憾ながら、そのとおりなのであるが、それを私は、言葉の表面の形とは、違った意味に解している。