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かがくはやくにたつか

科学は役に立つか

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页

青空文庫

ケリイ博士の「ゼロ」論は、いろいろに解釈し得るであろう。アメリカの科学は、少なくもごく最近までは、実用を目的とした科学であった。基礎的な研究も、もちろんあるが、その大部分は、「本当に実用に役立つためには、基礎的の研究が必要である」という意味での基礎的研究が多かったように思われる。

そういう国で育った科学者が、敗戦後の日本の科学者たちに、役に立つ科学を、百パーセントまで勧告するのは、当り前の話であるというのが、一つの解釈である。

しかしそれだけでは、やはり話が皮相になるおそれがある。問題は、一〇パーセントとか、一パーセントとか、という表現を用いず、ゼロと言ったところにある。そこには何となく思いつめたような感じがあるが、これがケリイ博士のいわば宗教的な熱情から産まれただけのことならば、日本にとって、まことに仕合わせである。しかし日本の国情そのものが、こういうつきつめたところへ行く過程にあったことを、予言したおそれもあるのである。

この半年以来、日本の社会を揺り動かしてきたいろいろな事件は、造船疑獄といい、首相喚問といい、新党結成の「猿芝居」といい、何だか末期的な感じを受ける。