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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页

青空文庫

「怒るようなことでないとはどんなことなんです」

「鉄馬さんなどが知らなくともいいことですよ」

「へえ、それは都合よくできてるもんですな」

鉄馬はむっとして、なおなにか云いそうであった。孝之助は苦笑しながら、すでに集まっている客たちのほうへと、彼を伴れていった。

法要のあと、この家では珍しく、賑やかな酒宴になった。客も親族のほかに、役所の上役や同僚たちも来て、ぜんぶで三十余人、二つの客間からはみだすくらいだった。それに年が明けると現勘定奉行の任期が満ち、孝之助が代って就任する筈だったから、座の空気はしぜんと陽気になっていった。

叔父の瀬木蔵人はいいきげんに酔って、

「これからはひとつ、高安の家風を改善して貰うんだな、もっと戸障子をあけ放して、明るい活気のある家にして貰いたい、そう云ってはなんだが、故人はどうも気むずかしくて文句が多くていけなかった、ここでは酒も悠くり飲めなかった、これからはそこをなんとか、ひとつ……」

などと云った。すると例によって、母方の叔父の渡辺又兵衛が、脇にいて鼻で笑った。

「どうも馬場下は暢気なものだ、石を笑わせるために道化るようなことを云う」