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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页

青空文庫

五の四

そんなわけで、笠井の家へいったときは、もう灯のつく時刻になっていた。

五の四

勘定奉行就任のことは、笠井の人たちにもわかっていて、孝之助がゆくと、内祝いの支度をしているところだった。

「そのまえに話したいことがある」

彼は鉄馬に囁いた。

「こちらの御夫妻と、杉乃と私の四人だけで話したいんだ。済まないがどこか部屋をたのむ」

鉄馬は承知して、自分の居間を選んだ。

杉乃が話したのだろう、兄嫁のおぬひは(自分の口から出たことなので)心配そうな浮かない顔をしていたし、鉄馬も知っているらしい、これはひどくむずかしい眼つきで、肩を張るように坐っていた。杉乃は良人の脇にいたが、きちんと膝を正し、窓のほうへ眼を向けたまま、しまいまで身動きもしなかった。

「これまでは、たとえどんな噂が出ても、自分だけのことなので、棄てておいてもいいと思ったが、こんどは義姉上というものができ、御実家にも迷惑の及ぶことを考えなければならないので、今後のために必要だと思う点を話すことにします」

孝之助はこう語りだした。

もちろん岡村八束と名はささなかったが、前後の関係でわかるに違いない。要点は公金費消のことで、それを内密で片づけるために自分が無理をして金を作ったこと、それは相手によることではなく、たとえなんのゆかりのない人間でも、そういう立場になれば