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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页
二の三
孝之助は封書をあけた。
それは左封じであって、中はいうまでもなく、日時と場所を指定した、決闘状であった。十月十日、午前七時、場所は大雲寺ヶ原である。
「――七日さきだな」
鉄馬が云った。
「おれが介添をひきうけよう」
「――七日さき」
と孝之助は口のなかで呟いた。
八束がどれほどの腕か、まるで知らない。
勝負は腕だけでなく、そのときのはずみにもよるし、気力や闘志にも左右される。孝之助は自分の腕にそう自信はないが、むざむざ負けようとは考えられない。だが、八束の日の選び方に、ちょっと逆を取られたように思った。
笠井の人たちが、家を出る直前に、このはたし状を渡した。孝之助にではなく、鉄馬の手を通じて、……それは、鉄馬もこれを見るだろう、ということと、時日を祝言の前にくりあげられることを避けるために違いない。
――彼は杉乃にも思い知らせるつもりなのだ。
いちど嫁にゆかせて、七日めに良人を死なせてやろう。そういう八束の企みと、歪んだ冷笑とが、見えるようであった。
「介添のことは、そのときまた……」
孝之助はそう云いながら、それを巻いて封におさめた。
二の三
式が終り、客たちも帰り、祝宴のあと片づけがすんだのは十一時に近いころであった。