轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页

青空文庫

…おまえがもし、岡村でなく、他の人間を愛していたのだったら、私は決してあんなふうにはしなかったと思う、八束は才気も手腕もあった、世間の評もひじょうに良かった、しかし私の眼にはそうみえなかった、彼の才腕はいつか彼自身を誤り、周囲の人々を傷つけるように思えた、そして、彼は偶然そういう不始末をした。

いつか笠井でも話したが、もうはっきり云ってもいいだろう、彼は御用商人と謀って、不正に役所を利用し、役所の金を費消したのだ、そのとき私は、自分の眼がまちがっていなかったと信じ、どうしても杉乃を彼の手に渡してはならない、と思った。

こうして無理におまえを娶った、私はおまえを愛していたが、それ以上に、おまえを不幸にしたくなかった、恋はなにより美しく尊いものかもしれない、しかし人間には生活がある。生きてゆくには辛抱づよい努力と、忍耐が必要だ、しかもその道は嶮しく遠い、思わぬ災厄や病苦にもみまわれるであろう、……私はそういうものからおまえを護りたかった、風雪に当てたくない、苦しみや悲しみを味あわせたくない、平安な家庭と、温たかく満ち足りた暮しを与えたい、これがなによりの願いだった」