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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

どこが顔だかわからない。その、ひとつかみの踏みつけられたボロきれのようなカラダのマタのところに、太いキノコのようなものが、垂直に立っている。……花岡には、それがそうだとは、初めわからないので、見すごして、またすぐガンドウの光を自分の手元にまわしかける。しかし途中で妙な気がして、再び佐山の方を真正面に照らし出す。……)

花岡の声 ……(やっと、それがそうだとわかると同時に、猫が他の猫におそわれて飛びあがったようなノド声を放つ)キョフン!……ど、どうして――(息をのんで、そのなま白く光っているものを見つめているらしい。佐山自身も、すこし顔をもちあげて、それを見る。……間)

村子の声 ウム。……(闇の中で低く唸る)

花岡の声 ……どうしたんだ? ど、どうしたんだ? (佐山に言っているのか、村子に言っているのか、わからない)

佐山 ……フン。(ムクムク起きあがりかける)

村子の声 (それと同時に)ああ。……(花岡が、ガタガタとふるえる手でガンドウをグルリと動かして、村子の方を照らし出す。……村子は先ほどの場所に、さきほどの姿勢のまま、立っている。ほとんど厳粛といってよいくらいに凝結した顔に、瞳孔が開いてしまったような両眼が、闇に消え去った佐山の姿の方に釘づけになっている。