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わかきひのせっつのかみ

若き日の摂津守

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页

青空文庫

ほぼ五年に一度くらいの割でおこなわれて来たが、先代の河内守光和が病気がちで、七年あまりも帰国しなかったのと、光辰が初入部であるためとで、領民たちから期待されていたものであった。

諸士引見は略されたが、二の丸御殿で祝宴がひらかれ、目見以上の家臣が宴に列した。家格によってそれぞれ十人、または五人というふうに組んで御前に進み、酒肴の膳をいただいてさがる。そして大広間で酒宴をする、という順序になっていた。

光辰は上段に坐っているだけであった。しもぶくれのおっとりした顔だちで、上背のあるいい躰格だが、眼つきや口許にしまったところがなく、疲れたような、寝不足なような、とらえどころのない、ぼうとした表情をしていた。うしろの左右に小姓が三人おり、一人は佩刀を捧げていたが、他の二人のうち、永井民部という小姓頭は、ときどき身を跼めて、光辰になにごとか注意をし、すると光辰は出かかっていた欠伸を半分でやめたり、袖でゆっくりと口のまわりを拭いたりするのであった。

上段のすぐ下に、三家老、側用人、年寄肝いりらの重臣たちが並んでいたが、城代家老の浜岡図書と、側用人の浅利重太夫とは、ときどき光辰のようすを見て、互いに頷いたり、囁きあったりしていた。