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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
「なにをさように御乱暴あそばすか」
「助けてくれ紋太夫、乱暴をするのはおれじゃあない、この連中が、おれを――」
「いいえお放し申しません」腰元はこう叫んだ。「わたくしお言葉がかかったのですから、今夜はどうしたってお放し申しません」
いやはや、若さまが腰元を引きずっているのではなく、腰元が若さまの手を放さないのである。そればかりではない、寝所の中ではまた四五人の声で、
「あたしはお中屋敷でちゃんとお約束したんです」
「いいえ、わたしのほうが先です」
「なんというずうずうしい方でしょう、なんという」
「放して下さい、若さまはあたしをお召しなんですから」
「なんというずうずうしい」
「お黙んなさいあたしが」
「いいえ放しません、放すもんか」
「お中屋敷ではこうみえても局持ちだよ、へん」
「畜生、放さないかこのあばずれ」
「まあ呆れた、なんてずうずうしい」
「ええこうしてやる」
「あらおやりあそばしたわね、負けるものか」
こういう派手な叫びといっしょに、どたんばたんと取っ組合いが始まり、きいーきゃーとたいへんな騒ぎである。こちらでは若さまが掴まれた手を振り放そうとする、腰元はしがみつく、突きとばして逃げる、泣声をあげて追い駈ける。