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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
三
「出迎えたいぎであった」広間へ通った大助さまは、家臣たちの祝辞挨拶に対してこう仰せられた。
「旅中の骨折りさぞかしと思う、盃をとらせたいから酒宴の用意をせよ、無礼講じゃ、妓どもなど呼んでまいれ」
「おそれながら」五十塚がびっくりして手をあげ、ぐいと片眼で厳しく睨みながら、「このたびの御出府は大切の御儀なれば、途中でさようなお慰みは相成りますまい、平にお控えあそばすよう」
三
その夜は金谷のお泊りであったが、若さまが寝所へはいると紋太夫がやって来て、「この馬鹿者」と叱りつけた。隣りには津山から供をして来た侍たちがいるから、声は低いが恐ろしく凄んだ怒り方である。
「あれほど遊んでもまだ妓などとぬかす、国から来た供に気付かれたらどうするのだ。貴様ほどおんな好きの馬鹿もない、本当に縛り首だぞ」
「だがなあ紋太夫」若さまはにやりと笑って云った。「おれはおんな気なしでは半日も過せねえ人間だ、それは初めにちゃんと断わってある。行儀も言葉も云われるとおりにするが、おんなだけはちゃんと付けてくれなければ困る、そう云ってある筈じゃないか紋太夫」
「黙れ、この痴れ者、江戸の御殿へはいれば侍女腰元が付く、それまで辛抱しろというのだ」