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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
八
若さまは例の御酒宴である。なにか腰元たちに悪戯をしているものとみえ、きゃあきゃあ、きいきい、たいへんな騒ぎだ。
「案外あの馬鹿が役に立つのは驚いた」増井琴太夫は、語を果して、先に帰るためにこう云いながら座を立った。「御対面の折もそうだが引見の席で梱方を扱かったところなど板に着いておる。ちょっと偽者とは思えないくらいだった、五十塚氏の丹精であろうが正に感服の至りだな」
「鋏と馬鹿はなんとやら申します」紋太夫は褒められて苦笑しながら、「なにしろ酒とおんなのほかに慾のない男でございますから、――しかしなお怠たらず注意を致します」
では先にと云って琴太夫は出ていった。
八
増井が出ていって屋敷の角を曲ったかと思う頃、供をしていた侍が蒼くなって駈け戻って来た。
「暴漢が現われて御老職を掠っていった」という。
「それっ」と居合せた者八人ばかりが押取り刀でとびだしていった。――さあ活劇である。偶にはちゃんちゃんばらばらでも起ってくれないと話がしにくくって困る、いざ諸君ご一緒に見物を……と云いかけたら、やれやれもはや終りとみえ、出ていった連中が帰ってまいった。
「手後れでした」