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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
七
「いかがでございますか存じませんが」金吾はにやにや笑って、「唯今のは垢擦りに上ったのではないようでございますな」
「垢擦りに来たんじゃあないって」若さまは金吾を睨んだ。「じゃあ――なんだ」
「御酒宴のとき仰せられた洒落でございましょう」
「だってあれは」こう云いかけたが、侮辱されたように片手を振り、「そんなばかなことがあるか、あんな言葉だけで、れっきとした処女が――浴衣だ、出る」
七
「そんなばかなことがあるか」若さまはひと晩じゅう寝所でこう呟いていた。「女性というものは温順貞淑なんだ、男には毛物めいたものがある。しかし女性は神に近い存在だ、雪のように清浄で花のように無垢なものだ、たとえ相手が主人にしたところで、たったひと言なにか云われただけで、そんな風に、いや――おれは信じない、これはなにかの間違いだ、決して女性はそんなもんじゃない筈だ」
だが明くる日も酒宴、次ぐ日も馬鹿騒ぎで、しかも女性の清純を確信する若殿は、そのたびに寝所から逃げださなければならなかった。伝吉はおんな好きである、従って伝吉の扮する若殿もおんな好きでなければならない、故に若殿は婦人とみれば口説く、これほど整然たる三段論法はござるまい。