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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

「小説新潮」1959(昭和34)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页

青空文庫

「ふつうなら一年くらいかかるだろうが」と参吉が云った、「おれはまえから早漆といって、漆の重ねかたや乾かしかたのくふうをしていた、まだ誰も知らねえんだが、それでやるとふつうの三分の一で仕上るんだ」

「保ちはどうなんだ」

「これが初めてだから慥かなことは云えねえが、一年かけてやったのと違いはない筈だ」と参吉は云った、「だがそれはまたのことにして、おまえにひとつ頼みがあるんだ」

「おれにできることか」

「親方に話してもらいてえんだ」参吉はちょっと口ごもった、「指物職だから、とくい先にこういう道具を欲しがっている客はねえか、もしあったら売ってもらいてえと思うんだが」

「わからねえな」と云って繁次はふと眼をあげた、「しかしおめえいま、頼まれて写しを作ったって」

「そうなんだ」と参吉はせきこんで云った、「或る道具屋から頼まれて、代金まできまってたんだが、その道具屋が急に潰れちまって、おれは金が要るし、途方にくれちゃってるんだ」

繁次はちょっと考えてから訊いた、「値段はどのくらいなんだ」

「道具屋との話では五十両ということだったが、事情が事情だから、現銀なら三十両でいいんだ」