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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

誓って、決して致しません。末ながら奥様にも宜しく申上げて下さいまし。

芳子

先生 御もと

この一通の手紙を読んでいる中、さまざまの感情が時雄の胸を火のように燃えて通った。その田中という二十一の青年が現にこの東京に来ている。芳子が迎えに行った。何をしたか解らん。この間言ったこともまるで虚言かも知れぬ。この夏期の休暇に須磨で落合った時から出来ていて、京都での行為もその望を満す為め、今度も恋しさに堪え兼ねて女の後を追って上京したのかも知れん。手を握ったろう。胸と胸とが相触れたろう。人が見ていぬ旅籠屋の二階、何を為ているか解らぬ。汚れる汚れぬのも刹那の間だ。こう思うと時雄は堪らなくなった。「監督者の責任にも関する!」と腹の中で絶叫した。こうしてはおかれぬ、こういう自由を精神の定まらぬ女に与えておくことは出来ん。監督せんければならん、保護せんけりゃならん。私共は熱情もあるが理性がある! 私共とは何だ! 何故私とは書かぬ、何故複数を用いた? 時雄の胸は嵐のように乱れた。着いたのは昨日の六時、姉の家に行って聞き糺せば昨夜何時頃に帰ったか解るが、今日はどうした、今はどうしている?