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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

午後二時頃には一室が一先ず整頓した。

「どうです、此処も居心は悪くないでしょう」時雄は得意そうに笑って、「此処に居て、まア緩くり勉強するです。本当に実際問題に触れてつまらなく苦労したって為方がないですからねえ」

「え……」と芳子は頭を垂れた。

「後で詳しく聞きましょうが、今の中は二人共じっとして勉強していなくては、為方がないですからね」

「え……」と言って、芳子は顔を挙げて、「それで先生、私達もそう思って、今はお互に勉強して、将来に希望を持って、親の許諾をも得たいと存じておりますの!」

「それが好いです。今、余り騒ぐと、人にも親にも誤解されて了って、折角の真面目な希望も遂げられなくなりますから」

「ですから、ね、先生、私は一心になって勉強しようと思いますの。田中もそう申しておりました。それから、先生に是非お目にかかってお礼を申上げなければ済まないと申しておりましたけれど……よく申上げてくれッて……」

「いや……」

時雄は芳子の言葉の中に、「私共」と複数を遣うのと、もう公然許嫁の約束でもしたかのように言うのとを不快に思った。まだ、十九か二十の妙齢の処女が、こうした言葉を口にするのを怪しんだ。