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ふとん
蒲団
田山 花袋
「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页
六
それに、田中が此方に出て来ていては、貴嬢の監督上、私が非常に困る。貴嬢の世話も出来んようになるから、厳しく止めて遣んなさい!」
芳子は愈困ったという風で、「止めてはやりますけれど、手紙が行違いになるかも知れませんから」
「行違い? それじゃもう来るのか」
時雄は眼をった。
「今来た手紙に、もう手紙をよこしてくれても行違いになるからと言ってよこしたんですから」
「今来た手紙ッて、さっきの端書の又後に来たのか」
芳子は点頭いた。
「困ったね。だから若い空想家は駄目だと言うんだ」
平和は再び攪乱さるることとなった。
六
一日置いて今夜の六時に新橋に着くという電報があった。電報を持って、芳子はまごまごしていた。けれど夜ひとり若い女を出して遣る訳に行かぬので、新橋へ迎えに行くことは許さなかった。
翌日は逢って達って諌めてどうしても京都に還らせるようにすると言って、芳子はその恋人の許を訪うた。その男は停車場前のつるやという旅館に宿っているのである。
時雄が社から帰った時には、まだとても帰るまいと思った芳子が既にその笑顔を玄関にあらわしていた。聞くと田中は既にこうして出て来た以上、どうしても京都には帰らぬとのことだ。