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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

京都訛の言葉、色の白い顔、やさしいところはいくらかはあるが、多い青年の中からこうした男を特に選んだ芳子の気が知れなかった。殊に時雄が最も厭に感じたのは、天真流露という率直なところが微塵もなく、自己の罪悪にも弱点にも種々の理由を強いてつけて、これを弁解しようとする形式的態度であった。とは言え、実を言えば、時雄の激しい頭脳には、それがすぐ直覚的に明かに映ったと云うではなく、座敷の隅に置かれた小さい旅鞄や憐れにもしおたれた白地の浴衣などを見ると、青年空想の昔が思い出されて、こうした恋の為め、煩悶もし、懊悩もしているかと思って、憐憫の情も起らぬではなかった。

この暑い一室に相対して、趺坐をもかかず、二人は尠くとも一時間以上語った。話は遂に要領を得なかった。「先ず今一度考え直して見給え」くらいが最後で、時雄は別れて帰途に就いた。

何だか馬鹿らしいような気がした。愚なる行為をしたように感じられて、自らその身を嘲笑した。心にもないお世辞をも言い、自分の胸の底の秘密を蔽う為めには、二人の恋の温情なる保護者となろうとまで言ったことを思い出した。安飜訳の仕事を周旋して貰う為め、某氏に紹介の労を執ろうと言ったことをも思い出した。