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ふとん

蒲団

田山 花袋

「新小説」春陽堂書店、1909(明治40)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,870 字 · 90 页

青空文庫

、その他種々のことを聞いた。困ったことだと思った。一晩泊って再び利根の河畔に戻った。

今は五日の夜であった。茫とした空に月が暈を帯びて、その光が川の中央にきらきらと金を砕いていた。時雄は机の上に一通の封書を展いて、深くその事を考えていた。その手紙は今少し前、旅館の下女が置いて行った芳子の筆である。

先生、

まことに、申訳が御座いません。先生の同情ある御恩は決して一生経っても忘るることでなく、今もそのお心を思うと、涙が滴るるのです。

父母はあの通りです。先生があのように仰しゃって下すっても、旧風の頑固で、私共の心を汲んでくれようとも致しませず、泣いて訴えましたけれど、許してくれません。母の手紙を見れば泣かずにはおられませんけれど、少しは私の心も汲んでくれても好いと思います。恋とはこう苦しいものかと今つくづく思い当りました。先生、私は決心致しました。聖書にも女は親に離れて夫に従うと御座います通り、私は田中に従おうと存じます。

田中は未だに生活のたつきを得ませず、準備した金は既に尽き、昨年の暮れは、うらぶれの悲しい生活を送ったので御座います。私はもう見ているに忍びません。